【Floor_12】

部屋には老人はいなかった。その変わりに、そこには黄金の色をした鎧が部屋の隅に置かれ、その壁には赤いラインの付いた黄金の盾が掛けられている。
「これは・・!」
ギルは驚きの顔で声を漏らした。
「・・亡き父の使っていた鎧ではないか・・何故こんなところに・・」
ギルは、ふと何かに気付いたのか、辺りを見回す。そして誰もいない部屋に話しかける。
「ご老人、何故私をこの部屋に連れて来られたのですか? もしかして貴方は・・」
その時、目の前の鎧立ての骸骨の口元が動き出した。
「この鎧を着るが良い。そして私の屍を乗り越えるのじゃ」
骸骨の頭はそう言うと動かなくなり、元の鎧立てに戻った。ギルはその光景に、呆然と立ち尽くしていた。しばらくした後に、我に返ったギルは自分自身に頷いた。
そして、その骸骨の鎧立ての前に跪(ひざまづ)き、黙祷した。

▲一つ戻る ▼進む