【Floor_06】

ギルはホッと一息漏らす。
「救われたか・・」
部屋の中を見渡すと、テーブルの上には白く光輝く光沢を持つ剣が置いてあった。見紛う程に鍛え直されていたが確かに自分の剣だ。
「あの老人は、味方だったのかな・・ 一体、何者なのだろう」
部屋の中を良く見回す。8畳程の部屋の中には、寝台の他にテーブル・椅子、壺・桶が転がっている。部屋の外に出るには丈夫な扉が一枚あるだけ。
テーブルには剣の他に幾ばくかの食料・水の入った皮袋・薬草・包帯用の布切れもある。テーブルの横には、ギルの体から外された兜・盾が置いてある。
それら防具を装着し、テーブルの席に着いた。乾いた喉を水で満たし、パンとイチジク等の果物を食す。そしてまた水をたらふく飲み、一時の至福の喜びを得る。

”そこへ、扉の外から甲冑を身に付けた者の足音が聞こえて来る”
ギルは呼吸を止め、剣の柄(つか)を握り身構える。
足音の距離を耳で確認する。
足音がだんだん近づき、一時の緊張感が走った。が、足跡はそのまま部屋の前を通り過ぎて行った。
その響きが遠のき、完全に消えるまで待った。
「ふぅ・・」
いかに剣技に優れた者でも、悪戯に体力を使えば身は持たない。
それは、ギル自身が身に沁みて分かっている。無駄な戦いを避けたのだ。
支度を終わらせて、そっと扉を開ける。
誰もいない・・。
「よし!」
階段を見つけ昇って行く。

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